1999年12月4日 横浜文化体育館  大日本プロレス


エキシビジョンマッチ 佐藤義尚 VS 関本大介
第1試合 中野知陽呂、タニー・マウス VS マルセラ、レディ・マジック
第2試合 大黒坊弁慶、カト・クン・リーJr VS ジ・ウインガー、伊東竜二

エキシビジョン市来の挨拶

ほぼ1年ぶりの大日本観戦。SAMURAIでは、 しょっちゅう見ているけどさ。気がつかないで来たけど、今日は5周年記念興行 なのね。紅白満十はなし? 2階席はガラガラながら、控えめにイスを並べた 1階席はほぼ満員。1500人くらいかな。大日本としては、大健闘だろう。 エキシビジョンマッチで体のできあがっている佐藤が関本をバックドロップからのキ ャメルクラッチで破った後、じん帯断裂で欠場の市来が泣きながらの挨拶。正 直、メインイベントだけがウリの興行なので、試合数が減ってほっとする。で も、市来 VS 田村は見たかったな。
 ここで選手入場式。山川がマイクを取り、「皆さん、最高ですかー?」と福 永法源か黒田哲広かと言わんばかりの挨拶を行い、正式に試合開始。女子タッ グマッチは中野がレディ・マジックをフィッシャーマンバスターに破り、弁慶 組 VS ウインガー組は弁慶組が伊藤をライガーボムで沈めた。社員旅行か ら帰ってきたその足でここに来たんだけど、眠いわ。睡眠足りないし、試合た るいし。

女子プロレスフィニッシュの弁慶ボム


第4試合 ファンタスティック VS チャビンガー

ちゃぶ台を広げてファンタスティックスを待つチャ ビンガー。ちゃぶ台を蹴転がして、試合開始。ファンタスティックスはこれほ ど空中殺法が綺麗な人も珍しいってことで、この人の試合を見るのは好きなん だけど、今日は両者ともに大きな技のミスをやってしまい、どうにも締まらな い。それでも、ファンタスティクスのケブラーダ、トペ・アトミコは実に見事。
 押されていたチャビンガーはちゃぶ台を相手に投げつけてペースを取り返し、 最後はちゃぶ台パワーボム。チャビンガーがベルト奪取。ま、普通の試合でした。

ファンタスティクスのケブラーダフィニッシュのちゃぶ台パワーボム


第5試合 マイク・サンプラス VS ブラック・サンプラス

リングネーム剥奪マッチだそうで。まったく期待し ていなかったカードながら、面白かったのだ。危なっかしいバックドロップで マイクを投げ捨て、身を起こしかけた半身のマイクにエルボードロップを落としたり、全然できて いないブラック。それでも、マイクを先に流血させると、コーナーへ後ろ向き に担ぎ上げた。バックを取って、雪崩式バックドロップか?という場面で、ブ ラックはそのままマイクの頭を鉄柱へゴン・ゴン・ゴンと連打。こういう手が あったか! 会場が嬉しそうな笑いに包まれました。
 場外でブレーンバスターを決めたり、果ては2階席から飛んでみせたり、派 手にやりまくって会場人気を集めたブラックながら、最後はマイクのラリアッ トでピンフォール負け。次はなんて名前で登場するんでしょうか。

雪崩式鉄柱攻撃2階からダイブ


第6試合 神風、松崎駿馬 VS メンズ・テイオー、葛西純

若手も頑張ってます!な試合。この手の試合はいろ んな団体で見るけど、葛西はまあ普通の頑張りでした。どこでも見られる程度 の頑張り。デスマッチのイメージが強い大日本でレスリングにまじめに取り組 むのは結構なことだけど。それが面白いかどうかはまた別の問題。葛西が粘り を見せたあげく、神風がムーンサルト2発からアックスボンバーで葛西を仕留 めたのだけど、はっきり言ってすごくつ まんなかったよ。一口にレスリングといっても、オーソドックスやハイスパー トやグラウンド中心やバチバチやいろいろあるわけで。今日神風達が見せたの は、本当に単なるレスリング。それだけ。何の色も主張も伝わってこない。こ れで自己満足しているあたりが神風なんだろうな。
 むしろ素晴らしかったのが試合後の神風のマイク。
「俺達は全日本に行くぞ。アジアタッグのベルトを大日本のマットに持って帰 ってくる。そうしたら、テイオー。お前は小川の世界ジュニアに挑戦しろ。俺 が道を作ってやるから。葛西、お前は永源とやれ」
 全日に上がる話もできていないうちからアジアタッグ奪取を宣言し、それだ けならまだしも、取った後の計画までできているこの余裕ぶり、どん なもんでしょうか? 捕らぬタヌキの何とか。ちなみに神風という人は数年前、全日マットで2試合ほ どやっただけで、俺が大日本の奴らに王道を教えてやる とのたまった過去があります。
 このままキテレツに終わるのかと思いきや、葛西は「俺はデスマッチ一本だ!」 というようなアピール。その通りだ。かっこいいぞ。


第5試合 グレート・サスケ VS 藤田穣

小鹿社長の挨拶。
20世紀の1月2日、つまり大日本は20世紀に一番早く試合をやります」
「大日本は20世紀中にきっと新日本、全日本よりも大きくなる」
 いろいろキテレツなこと言ってました。その後、みちのくプレゼンツの試合。 大日本育ちの藤田がそこそこ健闘も、サスケがトペ・レベルサからジャーマン でピンフォール勝ち。さすがに試合内容はスピーディーで、こなれている印象。 退屈はしなかったです。

プランチャで奇襲フィニッシュ前のトペ・レベルサ


セミファイナル 本間朋晃 VS A・ブッチャー

ブッチャーの凶器攻撃、場外乱闘に苦しんだ本間。 前半やられまくったものの、モンキーフリップやブッチャーの足へのキック、 ギロチンドロップなどで追い込み、間延びしたランニングエルボー2発でピ ンフォール勝ち。フィニッシュホールドに説得力がなかったこともあって、 あっけない印象が残ってしまったか。インディーの選手にとってブッチャー越 えの意味は大きいと思うのだけど、それがいまひとつパッとしない試合で消費 されてしまったのがちょっと残念。しかし、本間はずいぶん大きくなりました ね。やたらメジャー行きを口にする神風よりも、本間がメジャーの選手と正攻 法の試合をするところを見てみたい気がします。

凶器攻撃に悲鳴を上げたが最後はプロレス技で押し切った


メインイベント シャドウWX VS 山川竜司

蛍光灯の真ん中で対峙客の中、蛍光灯でガシャーン!!

ステージのところでテンガロンハットに顔を隠し、 ポーズを決める山川。と、ここで、会場に山川の声が流れる。
「待て待て待て。それは本物の山川じゃないぜ。この世の悪あるところに山川 登場!」
 本物の山川は一般のお客さんに混じって客席に座っていたのだ。ニセモノを 襲って、コスチュームを奪い取る山川。もう完全にこういうキャラになってし まったのですね。アリス・クーパーの曲で渋くWXも登場。今までが、これ以 下はない!という低調さだったのだから、メインくらいは締めてもらわないと 困ります。
 で、結果としては、期待以上でも以下でもありませんでした。いつも通り。 確かにすごいですよ。客席の真ん中で蛍光灯で互いの頭を殴り合い、蛍光灯ボ ードに叩きつけ、体に火を点けてボディプレスやったり。普通のプロ レスの技をかけても、リング上がガラスの破片だらけなので、すべての技が凶 器攻撃になってしまう。ついには蛍光灯ボードに火を付け、そこへ山川を投げ 込むWX。でも、この種の危険なことは1年前に見た時もやっていたことその ままですよね。

自分の体に火を点けてプレスこの背中見ろって

プロレスとは何かと言えば、戦いや殺し合いをデフ ォルメしたショー。だからこそ、プロレスラーは当たってないキック によろめいたり、決まってない関節技に悲鳴を上げたり、先の尖ってない凶器 に流血したり、いろいろすることもあるわけで。プロレスの文法の中で、その 攻撃が説得力を持ちうるのなら、選手が本当に受けるダメージは少ない方がい いに決まっている。それ故に、プロレスは手慣れてくるに従って、ある種のソ フィストケートが必然的に起きるはず。新日とか、アメプロがその頂点で、す ごくないこともすごく見せてしまう。いかにうまく手抜きをするかということ がプロレスの技術と言ったら、言い過ぎでしょうか。その意味で、今の大日本 プロレスは、本 当に危険なことを単にそのままやっているだけではないのかという気がするん ですよね。とかく有刺鉄線や電流爆破と言った側面から語られがちな大仁田厚 も、実際にはハイスパートプロレスや派手な大技が主として試合を成立させ、 そのアクセサリーとしてデスマッチの要素を使っており、危険そのものを商売 にしている大日本とは本質的に違うわけです。
 試合を決めたのは山川のガラスの上へのリバースタイガードライバー。でも、 この試合の中で、プロレスの技なんてどれくらいの存在感があったんでしょう か。残酷で危険なことをそのまま素の売り物として提供している大日本をすご いと評価して良いと思いますか? これは勘違いしてもらいたくないのだけど、こんな ことは人間として許せない!というような倫理的な規範を大日本の試合に適用し ているわけではなくて。本人達も腹を括ってやっているんだろうし、やりたい のなら、どんどんやればいい。死人が出ても、私は気にしない。そこまでプロ レスが好きな人間に敬意を示しても良いくらいです。私が言っているのは、 数年前と比べてもソフィストケートの過程が見えず、極限のことばかりをやり 続けている大日本には未来がなさそうだなと言うこと(その種のソフィストケ ートをマニアは「堕落」と呼んだりしますけど)。確かに蛍光灯デスマッチは すごい、すごいけど、こういうすごい試合を大日本はもう 何年も続けてきたわけで。それで、客が増えたんでしょうか。公式発表の観客 動員数だけ見れば、大日本は新日、全日、FMWに次ぐ数を誇っているものの、 水増しの多さでも大日本はダントツのハズ。若い選手が育っているだけに、第 2のW★INGになってもらいたくないものだと思います。
 最後は全選手がリングに上がって輪を作り、万歳。会場は暖かい拍手に包ま れた。

蛍光灯で頭をぶっ叩く火炎攻撃をかわした山川


面白かった!とは言えませんね。5周年記念と言う ことで、大日本の総力を結集してきた感じですが、無駄なカードが多すぎまし た。疲れた。これにプラスすること市来の試合があったなんて考えると、家に 帰ってしまいたくなります。大日本ファンで全部つき合う気がある人なら、良 かったのかも。
 また、何か新しい展開でもあれば、見に来ようかな。とりあえず5年間、お めでとうございます。早いものですよね。ナガサキがフレージャーにKOされ て今の路線に転換し、新日本との抗争を経て、今やデスマッチと言えば大日本。 光る選手はいないけど、これもまたプロレスラーっていう感じ。


天気読み  WRESTLE